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健康法としての鍼灸   飯田 寿


「人体の内外の歪(ゆが)みを治しましょう。」
「快適な睡眠、正しい食事、適度な運動で生活リズムを整えましょう。」
「気を整えることにより、美しく、健康で、活動的な、
笑いの絶えない、充実した人生を長く楽しみましょう。」

「人体の内部の歪みに対しては自律神経とホルモン、脳内環境のバランスを整えます。」
 
 自律神経は交感神経(注1)と副交感神経(注2)によって成り立ちます。
 鍼灸治療で交感神経と副交感神経のバランスを整え、
 白血球を初めとする免疫力を活用します。
 
 鍼灸治療の刺激によりホルモンバランスを整え、不快な症状の原因をとりのぞきます。
 鍼灸治療は脳内モルヒネ(注3)、内因性疼痛制御物質(注4)の分泌を調整し、
精神の安定と脳ホルモンを調整します。

 当院では、お灸と経絡治療によって生命活動のバランスを整えます。

「人体の外部の歪みに対しては筋肉、骨、関節の形と動きを整えます。」

 外反母趾があれば、足の親指に正しく力が入らず、まっすぐ歩けません。
足首が曲がっていても、バランス良く歩けず、膝や腰を痛めます。
膝が悪ければ、腰も痛くなります。骨盤がゆがめば腰や肩が痛くなります。
首が悪ければ腕や全身が悪くなります。
アゴや歯が悪ければ肩や首はもちろん、全身が悪くなります。

 当院では、針と手技矯正、テーピングとストレッチ、運動、理学療法を行って体の歪みをとります。

健康法としての「はりきゅう」は習慣的に受けることが大切です。
週に三回程度が普通ですが、週に一回だけの人や毎日通われる人も多くいます。



*注1、注2

 交感神経は「意欲と活動性の神経」です。

交感神経が刺激されると意欲がわき、内臓の動きが抑制され筋力が大きくなります。
一方、血管が閉じて血圧が上がり、脈が速くなり、極限までいくと血流が途絶えてしまいます。

白血球の一種の顆粒球は交感神経の支配を受けて活性化します。
顆粒球が正常に働くことで、組織の置き換えを進めて身体に有利な反応を続けます。
ストレスが続くと、交感神経の過緊張で顆粒球が増加、活性化しすぎます。
顆粒球により再生上皮が破壊され粘膜や組織の障害を引き起こし、癌や病気の引き金になります。

白血球は顆粒球60%、リンパ球35% マクロファージ5%で出来ています。
顆粒球の80%は好中球とよばれる性質を持っているので顆粒球のことを好中球とよぶこともあります。
血液検査で感染の指標に使われ、顆粒球が著しく増えていると何らかの感染があるとみなされます。

顆粒球は体に入ってきた異物を食べてくれます。
顆粒球は交感神経が優位になると増え、
増えすぎると常在菌と戦って化膿性の炎症をみずから起こすという性質があります。

また、細菌のいないところに顆粒球が押し掛けると組織を活性酸素で破壊します。
つまり、顆粒球は細菌と戦ってくれるのですが、細菌がない状態では組織破壊の炎症を起こすのです。
ニキビの出来やすい人は気をつけましょう。

 副交感神経は「リラックスと消化吸収の神経」です。

副交感神経が刺激されるとリラックスして、内臓の動きが良くなり、筋肉が弛緩します。
一方、血管が開いて血行が良くなり、血圧が下がり、脈が遅くなり、体がだるくなり、
極限までいくと血管が開きすぎて血流不全を起こします。

白血球の一種のリンパ球は副交感神経の支配を受けて活性化、
正常に働くことで免疫力のアップにつながります。

自堕落な生活を送っていると副交感神経が働きすぎてリンパ球が著しく多くなり、
アレルギーやアトピーの原因になります。

ストレスが少なすぎると赤ちゃんでもリンパ球過多体質になることがあります。
また、日光浴不足で運動嫌い、甘いものの好きな子供はリンパ球体質になりがちです。

リンパ球は免疫の主役です。
リンパ球の仲間のNK細胞はガン細胞や異物を攻撃します。

また、リンパ球はウイルスに対抗する抗体を作ったりします。
ところが増えすぎるとアレルギー体質になったり、風邪の症状が強くなります。

つまり自律神経は交感神経と副交感神経の両者のバランスが肝心なのです。

健康であるためには、ストレス過多の顆粒球人間でも、
のんびり屋さんのリンパ球人間でも駄目なのです。


*注3、注4

近年、生体内における疼痛制御機構の研究が進展し、
特に内因性疼痛制御物質としてのオピオイド・ペプチド、セロトニン、ノルアドレナリンなどの
役割が明らかになってきました。

鍼鎮痛を行うと、脳内、髄液中、血液中のオピオイドペプチドの量の上昇と鎮痛が認められます。

感覚としての痛覚を生じるためには少なくとも脳の視床まで情報が伝えられることが必要であると考えられています。
原因不明の自発性の慢性痛やガンの浸潤による神経痛の場合には、鍼をすることにより、
視床連合核内神経回路網の痛み伝達の機能状態を是正できるものと考えられています。


参考文献 
1.安保 徹(新潟大学大学院医学部教授) 「免疫革命」講談社インターナショナル2003年
2.安保 徹 「ガンは自分で治せる」マキノ出版、2002年
3.二木 清文ら 「経絡治療の臨床研究」滋賀経絡臨床研究会、2002年
4.植田 信夫 「脚線や足の形が「歪ん」でいる 「足が危機」にさらされている」たにぐち書店、2002年
5.高木健太郎・山村秀夫ら 「東洋医学を学ぶ人のために」医学書院、1984年

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